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 Nepenthes hamata / Borneo Exoyics  (*この画像は今回の内容に全く関係ありません)



 今回は栽培下における高山性種ネペンテスの菌による疾病について書く事にする。
ここ数年、高山性種ネペンテス栽培のスペシャリストと云われる方々の温室で謎の病気が蔓延し栽培種が全滅に追い込まれると云う事態が連続している。
今回の事態に恐れを感じた私は現在高山性種ネペンテスを作っておられる方々に対してリサーチをして原因と対策を必死に考えた。
対策については大体解っていたが、猛威を振るう謎の病原体について素人の私には解る筈もない。
事の重大さにとうとう山田食虫植物農園さんが動いて下さって漸く病原体の素性が明らかになった。
今回は明らかになった病原体の報告と併せて高山性種ネペンテスによく発症する細菌及び糸状菌の病気と対策を判り易く書いてみる事にした。




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 黒 脚 病 Pectobacterium による合併症  / Nepenthes rajah
スペシャリストの温室で黒脚病が発生し高山性温室が全滅、国内最大だと云われる N.rajah が失われてしまった。
黒脚病は6月~7月上旬にかけて発生し植物体の塊茎に伝染し腐敗を引き起こす。 
腐敗部分に空気が触れると黒変する。 主にジャガイモで見られる病害でネペンテスの感染例は初めてだ。 
アグリマイシン100水和剤で抑えるが、根本的な対策については後尾にて。




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 グ ラ ム 陰 性 桿 菌 Gram-negative bacteria の異常増殖 / Nepenthes edwardsiana
今年6月頃から突如、某高山性種専用温室で猛威を振るい、あらゆる対処も虚しく遂には約2千株以上のネペンテスが全滅してしまった。
研究機関の検査で植物を傷める悪性菌が検出されず我々は頭を痛めていた。 
しかしグラム染色の検査でグラム陰性桿菌が通常のネペンテスに常在する量のおよそ100倍以上も検出された。 
 概要としてグラム染色によって細菌類は2つに大別される。 染色によって紫色に染まるものをグラム陽性、紫に染まらず赤く見えるものを陰性と云う。 
グラム陰性桿菌とは大まかな一つの細菌類の総称であり、今回の症例では常在菌の異常増殖と捉えている。
 
 氏の温室では難易度の高い高山性種でさえも健やかに成長する程の好環境であったが今回はほんの少しのバランスの乱れで菌類間の均衡が保たれず爆発的に増殖した常在菌は植物体をも蝕んでしまう結果となった。
高山性種の高次元栽培下における過度の加湿では成長が爆発するが、それは両刃の剣でもあると云うことか。


 

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 症 例 :1 Nepenthes x Alisaputrana (葉裏)
全ての植物には様々な菌が適度に均衡を保たちながら常在している。 
高山性種ネペンテスの場合夏場の高温で体力を落とした時に常在菌に侵されてしまう事がしばしばある。

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 症 例 :2Nepenthes jamban
無冷房で高山性種を栽培していると夏場よく見られる症例。 種類により侵され易いものが決っている。

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 Nepenthes jacquelineae (症例:2)
常在菌(高温障害)では高山性種の場合夏を過ぎ涼しくなると植物体の体力も戻り症状が消えるが何の処置もせずに放置していると画像の様に下葉をどんどん失い最悪は頂芽まで侵蝕され枯死する事もある。
発症を発見したら湿度よりも風通しを優先し市販薬のトップジンM、ダコニール1,000等を散布すると良い。



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 す す 病 Asterina / Nepenthes aristolochioides
見た目通り黒いすすの様な糸上菌。 屋外温室で初夏と秋によく見られる。 害虫の排泄物から発生する。
植物体に直接寄生するものでは無いが見た目が汚らしく、其の後すす病の発生した植物体には必ずアブラムシやカイガラムシ、キジラミ、コナジラミ等が寄生し甚大な被害を被る事になる。
スミチオン乳剤やオルトラン水和剤等で害虫の発生を抑えるのが根本的な対策。



 
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 炭 疽 病 Colletotrichum / Nepenthes izumeae x x Trusmadiensis
高湿度で栽培する高山性種ネペンテスではポピュラーな病気。 トップジンM等で簡単に菌を抑え込む事が可能。
また炭疽菌と云っても色んな種類があり、この画像の炭疽菌はかなり厄介で抑え込むのに苦労した=3=3=3




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 菌 核 菌  Sclerotinia / 参考画像
晩秋に多発。 初期に下葉から上へ順に黄変して萎れやがて株全体が汚れた様な灰色になって腐敗する。
ネペンテスの場合茎の地際に発生、茎に白い黴が現れ最期は黒やオレンジ色のネズミ糞状の核菌が形成される。

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 Nepenthes x Alien ( N.lowii x truncata )
私が最も大事にしていた個体。 菌核病によりLOSTしてしまった。 
トップジンM、ベンレート水和剤で抑える。




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 S T A G E - 1 :  Nepenthes maxima
一見は夏場よく見られる常在菌による悪戯にも見えるが内容は極悪で似て非なるもの。
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 S T A G E - 2
この個体は輸入時から菌に侵されていて上の画像から3日も経たずこの様に腐ってしまう。 
研究所で検査してもらったところ灰色黴菌( Botrytis )、炭瘡菌( Colletotrichum )、ペスタロチア( Pestalotiopsis )が一度に検出された。
どれも重大な菌では無く、其々トップジンM、ジマンダイセン水和剤、ダコニール1,000等で抑える事が出来る筈だが当方ではあらゆる手立ても効力が見えなかった。 この個体は輸入当初から本症例が出ており、
どうやら輸入元ナーセリーで薬漬けで菌を押さえ込んでいたものが投薬を繰り返す事により菌が薬品に耐性を持ってしまった様だ。




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 フ ザ リ ウ ム (大型分生子) Fusarium / Nepenthes --------
土壌病害の典型として有名で500種以上が報告されている。 分生子には大小2つの型があり、この症例は大型分生子で極めて危険。
症状として中程の葉が突然黄色くなり葉を落したり株の元気が無い等の生育不良で外観上での断定は難しい。
この菌は根から侵入して地中茎導管部を侵蝕、初期は透明か真白なコロニー(病巣)を形成するがやがて桃色や黄色の色素を生産する。
画像では患部(画像中央の目玉に見える所)がカルスの様にも観えるが鉢から抜いてみると病巣周辺のコンポストが鮮やかな紫色に染まっていたので一発で判った。
フザリウムは典型的な土壌伝染性病で防除が極めて困難。  
1つでも出たら他の全ての鉢を調べて疑わしい株があれば躊躇無く破棄する事を勧告する。


 ザックリであるが以上が私の知る高山性種ネペンテスの一般的な病気の症例である。
治療法として、薬剤を投与する時は薬害を避ける為に30℃以下の気温時に散布し植物体を乾かす様にする。 夕方に投薬してケースの戸を開け朝まで加湿器を止めれば良い。 
また耐性菌を出現させない為に、投薬は1週間間隔で3回其々違った薬品を使用し、決して散布漏れが無い様にする。 同じ薬を連続使用したり中途半端な投薬では菌が薬品に耐性を持つ様になり最悪のケースになってしまう。
 
全ての植物には色んな菌が常在し、高い湿度で作る高山性種ネペンテスの栽培下では菌類の温床ともなりうる。 しかし適切な環境下では悪い菌を他の分解型糸状菌に食べて貰える様な菌類が均衡を保てる環境が自然と出来上がる。
 簡単に云うと菌による病気の最大の予防は環境づくり!
日当たりと風通しを良くする事で植物体の新陳代謝を高めてやる事が最も重要。 
また水はけの良い用土で通気良く植え込み根部へ新鮮な空気を送る事を意識したい。
 
ウェブ上では達人が作る素晴らしい植物体と共に高い栽培技術法が紹介されている。 
達人は植物栽培の基礎を熟知した上でのドーピングとして湿度の重要性を記しているのだが、高山性種ネペンテス入門者の殆どの方が達人のドーピング技術に憑りつかれてしまい植物栽培の基礎に盲目になってしまい大失敗している。 湿度、温度は副次的なものと捉えれば大きな失敗にならないし病気も出にくい筈だ。
 また近年はインターネットの普及で個人輸入が簡単になり、如何に植物を安く買うかと云う考えが当たり前の様になっているが、安く買っても菌に侵された植物を買っていたのでは反って無駄な出費をしてしまう事になる。
国内で充分トリートメントされた植物を買う方が安心だと云う事も最後に付け加えておく。 











                         ~ わ た し の こ ど も た ち ~
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 凄く賑やかで愉しいYO♪  チーコ♪はお姉ちゃんになったね。

 
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 最近はごはんも残さずいあっぱい食べる様になったよ♪


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 O太は大人しいけど頑固で暴れん坊。  何時まで経っても赤ちゃん♪